沙耶の唄
ニトロプラス

◇DATA◇
発売
オリジナル版:2003年12月26日
ベスト版:2009年7月31日
CD-ROM 1枚

フルボイス
ジャンル:サスペンスホラーADV

原画:中央東口
シナリオ:虚淵玄

―それは、世界を侵す恋。

交通事故によって父母を失い、自身も生死の境を彷徨った主人公、匂坂郁紀(さきさか・ふみのり)。
最新鋭の技術で脳の手術をし、なんとか一命を取り留めたが、大きな後遺症が残ってしまった。

この世界が、狂気を帯びたものに見える。
あらゆるものが彼の記憶にない形を取り、悪臭を放つ。人の言葉が異界の響きのように感じられる。
かつて、友人だったと思うモノも、見たくもないような異形のモノに成り果てていた。

おぞましい世界で、生きる意欲を失っていた郁紀を救ったのは、沙耶という一人の少女。
今の郁紀にとって、唯一、人間として認識できる癒しの存在だった。
そして、沙耶も郁紀を必要としてくれた。

郁紀と沙耶の間に芽生えた感情が、世界を侵蝕していく。。。

総評:7

有名な作品だという認識は随分前からあって、いつかプレイしたいな〜程度に思っていたのですが、某ショップでDL作品のポイント還元キャンペーンがあったのを機に、購入&プレイ。
プレイした頃のちょっと前に話題だったアニメのシナリオ担当が虚淵氏だった、というのも一因かもしれません。(私はアニメは見てません)

独特の世界観で、引き込まれる(というか、つい読み進めてしまうというか)物語でした。
前評判で聞いていたグロ描写は、私は大丈夫でした。

■シナリオ ・・・7.5点
エロゲには珍しいサスペンスホラーというジャンル。
私は虚淵氏の他の作品は未読なのですが、アクションが好きな氏にとっては「新しい挑戦」だったらしい。
私は、ホラーには、何か、読者が認識できない存在があり、それにより与えられる恐怖感が必須の要素だと思っています。
そういう意味では、そこまでホラー感はなかったかな…。
恐怖を与えるものの正体が早い段階でわかり、しかも、主人公は恐怖を与える側にいたので。

この作品の評価としてよく見かけるのが「純愛作品だ」という評価。
描かれているのはかなり偏った恋愛感情で、「純愛作品」という評価が最適かどうかは難しいところですが
私も、最も印象に残ったのは、ホラーよりも愛の描写でした。
なので、ホラーじゃなくて純愛だ、という評価もわからなくはないです。
何が正しいのか不明瞭な世界で、それぞれが、自分が正しいと思うものを守り、愛そうとする。
傍から見れば恐ろしく非人間的な行為も、誰かを愛するがゆえの行為なんですね。

エンディングは3種類ですが、分岐が後半なこともあり、プレイ時間は短め。
ていうか、シナリオ自体が短いです!
総プレイ時間は5時間くらいかな。
もともとフルプライス作品ではないですが、オリジナル版の価格は割高かも。
ベスト版やDL版の価格でちょうどいい気がします。

なお、いずれも沙耶との恋愛が大前提。
エチイベントは計5回で、沙耶以外のキャラのシーンもありますが、和姦は沙耶のみです。
それぞれのシーンは短めで、作品の中で、エチシーン自体はそれほど重要ではない雰囲気がありました。
沙耶の特徴を示すシーンでもあるので、不要だとは思いませんが。

■絵 ・・・7点
原画は中央東口氏。
今作ではエロゲっぽい絵柄ではないですが、作品の雰囲気によく合っていました。
厚塗りで、私は好きな絵柄です。

イベントCGは差分抜いて75枚。HCG率19%。
イベント数はたぶん5。
(シーン鑑賞モードがないので、CG鑑賞画面でカウント)
シナリオ自体が短いので、この枚数は十分かと思います。
制作された年代的なものかもしれませんが、HCGがあまりエロくない印象がありました。
最近の作品だったら、絶対に「出した後」の差分がありそうな場面でも、差分がなかったり。

また、気になる方もいらっしゃると思うので…グロ画像率は23%
なお、不快感を催しそうな 血・死肉的なものの描写があるものをカウントしています。
HCG率より高かったんだなー。
なお、当然ながら背景CGはカウントに含めていません。
気にする方は、頻繁に登場する背景CGがキツいかも。。。

また、OHPサイトなどにあるCGは、ゲーム内ではもっとグロい感じなのに
わざわざ広報用に描き直したのかなぁ?というものがいくつかありますので
購入前に、正統な方法でグロ度を確認するのは困難。。。
(ネット検索すれば、誰かがうpしたゲーム内CGが出てきます。が、合法と言える物は少ないと思われる)
デモムービーで、ちらっと背景が確認できます。

背景は写真を加工したものが大半ですが、3DCGも使用されています。
スタッフコメントを読んで、車や携帯も3Dモデリングされたものだと知りました。
すみません、お察しの通り、写真だと思ってましたw

■システム ・・・6点
わずかながら選択肢がある(2箇所のみ)、ビジュアルノベル。
通常プレイ画面にメニュー呼び出し系のアイコンはなく、
右クリックでメニュー一覧が表示されます。もしくはショートカットキーをワンプッシュでもOK。
メニュー一覧の表示される位置は固定で、ノベル表示部分に被って、画面の中央やや右上に表示されるのですが、
それが半透明なために、下に表示されているノベルの文字と重なって、少し見づらかったです。

また、グロテスク描写が苦手な人向けに、グロテスクなCGにフィルタをかける機能あり。(フィルタは2段階)
私は、最初は2段階とも適用した状態で始めたのですが、大丈夫な気がして、途中で2つとも外しました。
結果…うん、大丈夫でした。まぁ、あまり見たくないCGもありましたけど。
最もよく目にする背景CGは、あまり人間のグロは描かれている気がしないので、見れました。
イベントCGでグロいものはどうなるのだろう…と思って、設定を変えて見直してみたら…
背景部分は全く違う風に描き換えられている(ていうか3Dのグロ描写部分が取り除かれてる?)んですね!
これは、実際に描きたかったであろう世界観が全く描かれていないので、あまり良くない気がする。
一方で、「これは相当グロいので、フィルタかけて欲しい」と思うものがそのままなのね。。。
普段フィルタかけてプレイしてた人は、このCGが出てきたらショックなんじゃないでしょうか(汗

グロ描写として不快感を煽るのは、SEが大きな要素だと思いました。
湿った感じの各種SEは、場面によってはちょっとキツかったかな〜。


オート、スキップなどの基本機能は完備。あまり見かけないものとしては、「超速スキップ」や「前の選択肢に戻る」がありました。
「超速スキップ」は、スキップ速度が速いのではなく、一旦画面が暗転して、次の未読部分まで一気に飛ぶという機能。
ですので、CGなどを見て、シナリオを思い出しながらスキップしたい人には不向き。
突然、何日後かもわからない場面に飛ばされるので、結構驚きましたw

セーブはノーマル60個、クイックセーブはなし。
表示はプレイ日時とサムネイル、セーブ時のメッセージ42文字。
サムネイルの一覧が画面に並び、カーソルを合わせるとプレイ日時などが表示される形式です。ちょっと珍しいかな。
また、ゲーム開始〜セーブ時の総プレイ時間も表示されます。

そういえば、私はDL版を購入してまして、インストールが不要でした。(圧縮ファイルの解凍のみ)
そのせいか、セーブデータのロード時間が長かったです。
その他、プレイ中に支障を感じることはなかったので、さほど気にしていませんが。

鑑賞モードには、イベント鑑賞モードがありません。
これは、人によっては評価が下がる一因かも。

クリア後には、スタッフのメッセージが読めるURLへのリンクが出現します。
こういう、ちょっとしたサービスは嬉しいですね。

■音楽 ・・・7点
音楽担当は、ZIZZ STUDIO。
エレクトーンやエレキギターの曲で、暗い雰囲気の曲が多め(作風からして当然ですが)
ボーカル曲はテーマソングが2曲。『沙耶の唄』『ガラスのくつ』で、いずれも歌うのはいとうかなこさん。
穏やかな歌声が心地よい曲でした。

総曲数は多くないですが、必要な分、適した曲が用意されていたと思うので7点で。

■総評 ・・・7点
読ませてくれるエロゲは久しぶりでした。
(私がノベル系のゲームをあまりプレイしていないということもあるかもしれませんが。)
描かれているものは決して易しくはない、どちらかといえば難しく、読む人によって捉え方も変わる深い内容だと思いますが
読みやすく、面白かったです。
シナリオ以外の点は、凝ったものはなくても一通り揃っていましたし。

余談ですが、発売が2003年ということもあってか、いろいろ時代を感じました。
携帯とかスラックスとかw

■お気に入りシナリオ:別離エンド
             正しいエンディング名がわかりませんが、二人が別れて、郁紀が収容されるあのエンディング。
             分岐点の選択肢だけだと「あまり考えずに、沙耶より現実世界を選んじゃった」という感じなんですが(苦笑)
             選択肢を与えた沙耶の優しさが素敵だなぁと思いまして。

             TRUEなのかな?と思う世界再生(?)のルートは、なんだか「沙耶、なんで突然そうなる!?」という
             感想が捨て切れませんでした。本当の愛を知った結果なのかなぁとは思うんですが。

2011.5.29

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