殻ノ少女
Innocent Grey

◇DATA◇
発売:2008年7月4日

DVD-ROM 1枚 フルボイス
ジャンル:サイコミステリィAVG

原画:杉菜水姫
シナリオ:鈴鹿美弥

――その病(パラノイア)は再生する――。

昭和三十一年三月、東京。
敗戦から十年が過ぎ、在りし日の姿を取り戻してきたこの町で、時坂玲人は私立探偵をしていた。

そんな玲人が公園で出会った一人の少女。
真っ白な制服に身を包む、美しい黒髪の少女は玲人にこんな依頼をした。
「探して欲しいんだ。――私を。本当の、ね」

その頃、東京では奇妙な猟奇犯罪が多発していた。
連続少女バラバラ殺人。
若い女性ばかりが行方不明となり、無残なバラバラ死体で発見されるのだ。
死体は、ただバラバラにされただけでなく、何かになぞらえたかのような謎の修飾を施されていた。
いくつかの死体に共通して施されていたのは、子宮を切除し、その中に黒い卵の殻を入れるというもの。

玲人は、行方不明の少女が二人出た「私立櫻羽女学院」の教頭から依頼を請け、捜査を担当することになった。
そして、学院であの黒髪の少女…冬子と再会することになる。

玲人たち私立探偵や警察が、失踪および殺人事件の真相を追う最中にも、増えていく犠牲者。
そしてついに、犯人の手が玲人のよく知る学院生に伸びる…。

バラバラ殺人を調査する玲人が思い出さずにはいられない、六年前の事件。
愛しい婚約者を奪われた「六識事件」…あの事件に、似ている。
もう二度と大切な人を失いたくないという玲人の思いは、惨劇の輪廻を打ち砕くことができるのだろうか…?

総評:8

処女作からお気に入りのブランド「InnocentGrey」の第三作。(ファンディスク除く)
ミステリィという主軸はそのままに、より「推理ゲーム」の色を濃くした今作でしたが、良かったです!
元々レベルの高い作品を作るブランドなので、システムの面白さが加わって、良作になっていたかなと。

ただし、ヒロイン級の登場人物が殺されていく展開は相変わらず容赦ないので、そういうのが許せない方は、プレイしない方が良いかもしれません。

■シナリオ ・・・7点
これまで、推理モノっぽいなと思わせながらもほとんど推理ゲームではなかったイノグレ作品ですが、
ユーザの声を反映したのかなんなのか、今回は本格的に推理ゲームでした。
集めた情報から答えを導き出していくシステムなのですが、詳細は「システム」の項で。

シナリオは、連続殺人事件を追いながら、学院生との交流を深めていくストーリー。
ただし、事件解決にかなり重きが置かれているので、恋愛モノという印象はあまりありませんでした
18禁ゲームなので当然そういったシーンも含まれるのですが、恋愛の末に結ばれるというシーンはほとんどない。
メインヒロインの冬子との恋愛でさえ「いつの間にそんなに気になる存在に?」な気がしてしまいました。
なので、本当にエチシーンがなくてもいい作品だなぁと。
グロ表現の面では18禁にしといた方がいいかもしれませんが(^^;

プレイヤーの推理によってシナリオの展開とエンディングが変化するため、
シナリオの長さや犯人の人数、殺される登場人物に多少の変化はありますが、基本は一本道です
(トゥルーの一本道が軸にあって、推理が失敗しているとその途中でわき道にそれる&エンドになる感じ)
バラバラ殺人、学院生の失踪事件、冬子の依頼 の3つに関わりながら、3つ…過去の六識事件も含めれば4つの
事件の繋がりを明らかにしていきます。
登場人物は40人もおり、それで4つの事件が繋がりを見せていくので読み甲斐がありました!

読み甲斐があったけれども微妙に評価が7点なのは、全て読み終えても「?」と思う部分が何点かあるため。
<以下ネタバレを含むので、要反転>
小さなことだと、織姫が健康診断を受けていなかった理由。不必要な情報なら、出さないで欲しかった。
冬子が単為生殖で生まれたという超展開もちょっと納得行かず。
冬子をキリストと同じ位置に置くための設定だというレビューを書いてる方がいて、なるほどと思いもしたんですが、
そこまで冬子を象徴的な存在にする必要があるんでしょうか?
あと、ヒロインと親しくなる描写をもう少し丁寧にして欲しかった。(せめて冬子だけでも…。)
おかげで、結局玲人は由記子が忘れられないのかなぁとか、杏子とのエンディングがグッドエンドかもとか思っちゃうわけですよ。
大きいことだと、「結局、ハッピーエンドはないよね?」ということ。
冬子が戻ってくるエンディングが一つだけあるけど、四肢を失った冬子の最後のシーンを、ハッピーだとは呼べない。
トゥルーを含む多くのエンドでは、冬子は行方不明のまま。電車のシーンからするに、殺されているんですが、問題は、
殻ノ少女がまた次の少年の手に渡ってしまっており、少年も殻ノ少女に魅了されていること。
パラノイア、再生しちゃってるよ!!!
惨劇、終わらないじゃないか。
少年に渡された少女が、冬子ではなく美砂であれば、瑠璃の鳥の絵=自由になった冬子ということで、
冬子生存説に唯一希望を持てる展開ですが…六識と心爾があの後に接点を持つとはちょっと考えづらいし…うーむ。


と、不満がいくつかあるので、7点にさせて頂きました。
面白いーと思わせてくれたのは操作システムの存在が大きいです。

シナリオ面で注目しておかずにいられないのが、イノグレの処女作『カルタグラ』との繋がり
OHPで登場人物を見れば、カルタグラから何人かキャラが参加しているのはわかるんですが
ファンサービスのゲスト参加かなーぐらいに思ってたんですよね。
でも実際にはカルタグラの後日談が多く含まれているので、カルタグラファンには嬉しいシナリオでした。
逆に言えば、殻ノ少女をプレイするなら、カルタグラもプレイしておいて欲しい!ということです。
エチ対象となっている初音とのシーンは、カルタグラをプレイしてないとよくわかんないと思いますよ!
なお、カルタグラ・PPの共通登場人物で、密かなマスコットキャラ?であった大作さんは、お姿が見えません。
でも「ロシアン焼き」がシナリオに登場するので、存在はしてるんだと思います(笑)。

殺人・グロ表現については…
捜査のために、死体のCGをじっくり見る必要があるので、これまでの作品より少々キツイかも
それがまた、綺麗な死体じゃなくて猟奇殺人された死体ですからね;;
あと、死体をバラバラにするシーンでノコギリの刃音がSEで入ったりするので、生々しいです。
犯人視点のシーンは、通常のアドベンチャーシーンとは画面が変わる(ノベルっぽくなる)ので
そのシーンに切り替わると、「ぃやー!キター!」と思ってしまってました(汗


エチは各ヒロイン、基本1回。冬子と夏目さんのみ複数回。
先ほども書きましたが、シナリオにおけるエチシーンの存在意義がかなり薄いため、エロ度は低めの評価です。
杉菜さんの絵は肉感があるので、お色気度は高いんですけどね。

■絵 ・・・9点
質は文句ありません。最高級です。美しい。
それなのに満点じゃないのは、枚数が少なかったから。

イベントCGは差分抜いて102枚、HCG率36%。イベント数は12。
グロCGとエチCGの印象ばかりで、通常のイベントグラフィックが少なかったような…?
ちなみに、グロ(それほどではない死体含む)CG率は10%でした。
枚数的には、半数以上は通常グラフィックな訳ですね…。残念ながら、印象が薄いです。

■システム ・・・8点
OHPでパッチが配布されています。適用しましょう。
私は一度、パッチ適用後でも「選択肢になると勝手にバックログ画面になり、先に進めない」という症状が出ました。
殻ノ少女を強制終了(×で閉じる)して再起動すれば、さっき止まった選択肢の先には進めるけど、また次の選択肢で同様の症状が
出て「もうやだー」と思うこともありましたが、PC再起動で直りました。PCの不調だったのかも?

それはさておき、ゲームジャンルはアドベンチャーですが、捜査パート、推理パートという独自のシステムが採用されています
捜査パートは、死体や重要な現場のCGの中で、気になる部分をクリックして証拠を探すパート。
推理パートは、これまでに集めた情報が記された手帳から、真相を推理して選択するパート。
前者については、クリック判定が非常に微妙で、ちょっと難しかったです。
簡単にトゥルーに行かせないようにしているのか、重要な証拠がクリックしづらくて参った
一通りの証拠を見つけ終わるまで捜査パートを抜けられないので、見落とすことはほぼないのですが…。
(見つけなくても進める重要な証拠もあるが、その場合はトゥルーにたどり着けなくなる。)
後者は、シナリオが進むにつれて手持ちの情報がかなり増えるので、それまでのシナリオの詳細を覚えていないと
正解を選び出すのはなかなか困難
です。
シナリオをちゃんと覚えていても、それは選ばないだろう!という人物が正解だったりする時もあるので
難易度は高め。「それは違うだろう…」とツッコミされて、もう一度選択できる時もあるんですけどね。
難易度は高いですが、だからこそ面白いと感じたんだと思います。
数個の選択肢から選ぶだけとは違う、考える面白さですね。

セーブ枠数60。クイックセーブ・ロードはなし。
話数とゲーム内日付、表示中メッセージの一部表示、セーブ日付・時刻記録、サムネイル付き。
大抵のエロゲは「セーブ枠、こんなにイラネー!」と思うのですが、殻ノ少女はもっとあってもいいかもしれないと思った
私は1周目のみ自力プレイ&途中、要所でセーブをしましたが、それで20枠使いました。
2周目以降は攻略を参考にして、最終的には30枠使ったので…全部自力でしようとしたら、相当な枠が必要そう。
あと、差分CGの回収が何回かあるので、クイックセーブが欲しかったなー。
ただでさえ通常セーブが多いので、差分のために1枠使うのが、なんとなくもったいなく感じました。

あ、セーブファイルが一つ231KBになってた!随分スリムアップしたんですね!!


CVさんはオーディションで採用されており、主役の冬子役の方は新人さんのようです。
感情表現に乏しいしゃべり方(悪く言えば棒読み)だなと思わずにはいられませんでしたが、冬子だったからOKなのかも
普通に感情豊かに話すヒロインを演じられるのを聴いてみたいです。
一方で、エロゲ大御所な方も参加されており、総じて問題ないレベルでした。
私はアニメ声な方がちょっと苦手なのですが、そういうキャラもおらず、快適(笑)

イノグレ名物の音声ボリュームチェックは、カルタグラと同じ「しりとり」でした。(何人かのキャラが「ネタ切れ?」と突っ込んでいたw)
シナリオに登場したキャラしかチェックできないので、最後に一気に聴くのがいいかなーと思います。
名物的な意味でテストボイスが長くなっていますが、実はこれ、実用的なんですね
話している最中に音を大きくしたり小さくしたりできるので、ちょうどいいボリュームを探すのが楽でした。
(通常、調整つまみをスライド→短いテストボイスを再生 なので、間に無音時間が挟まり、前回の設定値との差が認識しづらい)

音声ボリュームで気になった点は、デフォルトの音声が小さいこと。
一括設定はなく、キャラごとに音量設定する必要があるので、新キャラが登場する度に、コンフィグを開いて大きめにしてました。
じゃあ、PCのボリューム大きくすればいいんじゃね?と思われそうですが、BGMボリュームはデフォルトでは大きいんですよ(汗
PCのボリューム上げると、BGMがうるさい。私はPCは通常通りでBGMをデフォルトより小さめに設定してプレイしてましたが
BGMは一箇所設定するだけだから、PC大きめにした方がいいのかな…。でも他のアプリもうるさくなるのはイヤだ。

■音楽 ・・・8点
音楽制作担当は、イノグレ作品ではお馴染みのLittleWing。
主題歌『瑠璃の鳥』も、これまでの作品に引き続き、霜月はるかさんが歌われています。
いままでボーカル曲の評価を高くしていたイノグレ作品ですが、今回はBGMに注目!
タイトル画面で流れるピアノ曲『殻ノ少女』が大好きです。聞き惚れます。
その他のBGMも、ピアノや弦楽器などのアナログ楽器音をメインにした曲がほとんどで、華やかな曲は聞いていて心地良く、
ミステリアスなシーン用の曲は、シナリオと相まって、すごく怖くなる。
総曲数は26+ボーカル曲1
『瑠璃の鳥』(ボーカル版)は、残念ながらゲーム内の鑑賞モードでは聴けません。

■総評 ・・・8点
カルタグラ、PPほど発売前に「面白そう」とは思わず、少し積み期間が長かったんですが、
プレイ開始したらハマりました!一気に進めてしまいましたよ。
「全ヒロイン黒髪・制服は真っ白で」という設定が、杉菜氏のこだわりだということはわかっていても「地味だな」と発売前には
思っていたんですが、プレイ中にそこが気になることはありませんでした。
絡み合う4つの事件とたくさんの人物を、上手に繋いだシナリオは好評価。
すこし「?」と思う設定や展開があるにしても、酷く投げっぱなしになった設定はなかったので、まぁ許容範囲かなと。
そして、捜査&推理パート。お疲れさまでした(イノグレも、プレイヤーも/笑)。

なお、ドラマCDが発売されており、結末が異なるようです。
気になるけど…購入していません。グッズセット「ルリノユメ」が再販されたら考えるかも(笑)

最後になりましたが、「美少女ゲームアワード2008」でBGM部門と共に金賞を取ったプロモーション。
特典頼みでなんとか初版の売り上げを伸ばそうと頑張っているエロゲ界において、
店舗特典を一切排除するという大胆なプロモーションでした。
(唯一、発売前のシナリオ(犠牲者)予想「LOT30」の優勝者のみが、描き下ろしのテレカをゲット)
杉菜氏の絵はファンが多いでしょうから、特典商法で売り上げを伸ばすことも容易だったろうに、敢えてそれをしなかった姿勢が
素晴らしいと思います。実力で売った!という感じですね。
なお、げっちゅ屋主催の「2008年美少女ゲームランキング」(side black)でも複数の部門で入賞しています!

■お気に入りキャラ:冬子
            正直、それほど思い入れの強いヒロインはいないんですが、敢えて選ぶなら冬子。
            意外と(?)ステラも好きかも、癒しキャラですね。
            過去のイノグレ作品と比較すると、ヒロインと仲良く過ごす描写が少なかったので感情移入がしづらかったんだと思います。
            結果、「○○が殺されたぁ!」と泣くことはあまりなかった(^^;
            イノグレのことだから、きっとこの娘も殺されるだろうという覚悟の上でプレイしているからかもしれませんが。

            そういえば、紫とのエチシーンがなかったよね!ちょっと驚いた!
            妹とのイベントがあるのもイノグレの特徴だったのに。
            紫もいいキャラだったので(七七や柚芭に比べたら普通だし)、残念に思った人もいるんじゃないかしら。
            ↑普通の妹だからこそ、イベントがなかったとも言えますね(笑)

2009.06.06

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